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#日本標準産業分類#業種設計#分類体系

No.22 業種分類をどう設計すべきか:総務省式か、オリジナルか

「この会社の業種は何?」 このシンプルな問いに答えるのが、現代ほど難しくなっている時代はありません。

楽天グループ株式会社は、EC企業でしょうか? 金融(カード・銀行)企業でしょうか? それとも通信キャリア(モバイル)でしょうか? 正解は「全部」です。

ビジネスモデルが複雑化・複合化する現代において、企業をたった一つのカテゴリに押し込める「単一分類」は限界を迎えています。しかし、検索UIや分析のためには、何らかの「分類(Taxonomy)」が必要です。

本記事では、自社データベースにおいてどのような業種分類ツリーを設計すべきか、その戦略を論じます。


1. 既存のスタンダードを知る

ゼロから分類体系を作る前に、まずは世の中に存在する「巨人の肩」を知りましょう。

日本標準産業分類 (JSIC)

総務省が定めた、日本における最も公的な分類です。

  • 大分類(アルファベット1文字):例「G 情報通信業」
  • 中分類(数字2桁):例「39 情報サービス業」
  • 小分類(数字3桁):例「391 ソフトウェア業」
  • 細分類(数字4桁):例「3911 受託開発ソフトウェア業」

メリット: 公的統計との突合がしやすい。網羅性が高い。 デメリット: 分類が古い(「Webサービス」などが的確に表現できない)。製造業などの区分は細かいが、IT・サービス系がざっくりしすぎている。

東証33業種

証券コード協議会が定める分類。「電気機器」「医薬品」「銀行業」など。 メリット: 上場企業データとしては一般的。投資家にとって馴染みがある。 デメリット: 33個しかないため区分が粗すぎる。「サービス業」という箱に、全く異なるビジネスが大量に放り込まれている。

GICS (Global Industry Classification Standard)

S&PとMSCIが開発した世界標準。「情報技術」「ヘルスケア」など。 メリット: グローバル企業との比較に適している。現代的な産業構造を反映している。

Teikoku / TSR などの調査会社コード

帝国データバンクや東京商工リサーチが独自に策定した分類コード。JSICをベースにしつつ、より実態に即した拡張がされています。

2. 「単一ラベル」から「マルチラベル」へ

従来のデータベース設計では、IndustryID という1つのカラムを持ち、1つの企業に1つの業種コードを割り当てることが一般的でした。 しかし、前述の楽天やソニーのようなコングロマリット企業、あるいは「農業 × IT」のようなX-Tech企業を表現するには不十分です。

解決策:Main Industry と Sub Industries

現実的な解は、以下の2段構えで管理することです。

  1. Main Industry(主業種): その企業の売上の最大構成比を占める事業、あるいは祖業。1つだけ設定する。リスト表示や大まかなフィルタリングに使用。
  2. Sub Industries(副業種): その企業が関わっている全ての事業領域。複数設定可能(List型や別テーブル)。詳細検索に使用。

例:楽天グループ

  • Main: インターネット附随サービス業 (EC)
  • Sub: 銀行業, クレジットカード業, 電気通信事業, 保険業, スポーツ興行

このように設計することで、「通信業」で検索したユーザーにも楽天をヒットさせることが可能になります。

3. 「タグ」による柔軟な分類

階層構造(ツリー)を持った固定的な分類(Taxonomy)とは別に、フラットで柔軟な**「タグ(Folksonomy)」**を導入することを強く推奨します。

固定分類の限界を補う

「SaaS」「FinTech」「VTuber」「ドローン」「MaaS」……。 新しいバズワードやビジネスモデルは毎年のように生まれますが、これらをいちいち標準産業分類に追加するのは不可能です。

そこで、タグの出番です。 企業データに対して Tags: ["SaaS", "BtoB", "HR Tech", "サブスクリプション"] のように自由にタグ付けできるようにしておきます。

タグの生成方法

これを全件手動で付けるのは不可能です。ここでこそ**LLM(大規模言語モデル)**の出番です。 企業の「事業内容(テキスト)」やWebサイトのメタディスクリプションをLLMに読ませ、「この企業を表すタグを5つ抽出して」と指示すれば、非常に高精度なタギングが自動化できます。

4. 自社独自の「利用シーン別分類」

JSICのような網羅的な分類は、「探すための分類」としては優秀ですが、「選ぶための分類」としては使いにくい場合があります。 自社のデータベースの利用目的(ユースケース)に合わせて、独自の切り口を用意するのも手です。

営業ターゲット用分類(BtoB向け)

  • 「オフィスが必要な会社か?」: 内装業やOA機器販売にとっては、「製造業か小売か」よりも「オフィスワーク中心か現場中心か」が重要です。
  • 「IT予算がある会社か?」: 「SIer」「Web制作」「自社プロダクト開発」などを区別する分類。

与信管理用分類

  • 「在庫リスクがあるか?」: 製造・小売・卸売(モノを持つ) vs サービス・IT(モノを持たない)。
  • 「現金商売か掛売りか?」: 飲食・小売(日銭が入る) vs 建設・開発(入金サイトが長い)。

ユーザーが「何のために業種を見ているのか」を突き詰めると、意外と標準分類とは全く違う軸が必要なことに気づきます。これを**「機能別分類」**として実装すると、データベースの価値が跳ね上がります。

5. まとめ:分類は「生き物」である

業種分類設計における最大の失敗は、「一度決めたら変えない」ことです。 産業構造は変化します。古い分類に固執すれば、新しい有力企業が「その他」の中に埋没してしまいます。

  1. ベースは標準(JSIC等)に準拠し、他社データとの互換性を保つ。
  2. 実態はマルチラベルで管理し、複合的なビジネスモデルを表現する。
  3. トレンドはタグで追いかけ、検索性を確保する。
  4. **メンテナンス(分類の見直し)**を1〜2年に一度は行う。

「正しい引き出し」を用意してあげること。それが、膨大な企業データの中から、ユーザーが求めている「運命の1社」に出会うための最短ルートを作ることになるのです。

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